YLFレーザ結晶
YLFは、YAGと並ぶ代表的なレーザ媒質用ホスト結晶です。
YLFは、0.12-7.5μmの光学的透過帯域を持つ異方性一軸結晶です。
あらゆる希土類元素がYLF格子に含まれるイットリウムとのイオン交換が可能ですので、
YLFをホスト結晶としまして、UV光から近赤外光におきまして広い範囲での発振を
可能とするレーザ媒質の引上げが可能です。
TYDEX社のYLFは、ブリッジマン(Bridgman)法で引上げています。
YLFの特徴は以下の通りです。
・高出力、低いビーム発散角、シングルモード動作に効果的
・適度な繰り返し速さでの高い平均出力Qスイッチ動作
・Qスイッチ動作と周波数重複用の直線偏光空洞共振器に最適
・大きな外径のロッド・スラブにおける潜在的均一モード
・誘導放出断面積と蛍光寿命が低いCAW閾値に最適
・熱レンズ効果がYAGより19倍低い
・UV光から近赤外光における広い範囲での発振の為のレーザ媒質
・多波長・継続発振に最適
・Nd:YLFの1053nm発振はNd:ガラスの利得曲線と一致し、YLF用発振器や前置増幅器
として優れた動作が可能
YLFの特性
結晶構造とスペースグループ | 正方晶 ; C64h |
格子定数、Å | a = 5.175, c = 10.740, z = 4 |
分子量 | 171.844 |
密度 | 3.95 |
モース硬度 | 4 - 5 |
融点、℃ | 825 |
屈折率 | n0 ne |
@633nm | 1.433 1.464 |
@1064nm | 1.448 1.470 |
1インチ長結晶のTWD | λ/5@633nm以下 |
熱伝導率(Kp)、Watts cm-10C-1 | 0.06 |
熱膨張(α)、10-6×deg C-1 | 13 along a |
8 along c | |
ヤング率(E)、1011×dynes×cm-2 | 7.5 |
抗張力、108×dynes×cm-2 | 3.3 |
熱容量、J×g-10×K-1 | 0.79 |
実際的には、全ての希土類元素イオンはYLF格子にドープ可能と考えられています。
ドープ可能な最大濃度は、それぞれの希土類元素により異なります。
例えば、Y(イットリウム)は、YbやLaと100%代替が可能です。
Laは50%代替可能です。
Ndでしたら1.5%まで可能です。
それぞれ発振波長は、以下の通りです。
Nd:YLF -λ=1047nm, 1053nm, 1313nm, 1324nm, 1370nm
Ce:YLF -λ=325nm(ピーク)、305nm - 335nm(同調可能帯域)
Er:YLF -λ=850nm, 2810nm
Ho:YLF -λ=750nm, 2060nm
Tm:YLF -λ=435nm, 1890nm, 2300nm
異なるドーパントどうしの異なる濃度でのコドープ品も供給可能です。
Nd3+ドープLiYF4(Nd:YLF)の特性
最も使用されているドーパントはネオジム(Nd3+)です。
ランプ励起用のロッドの長い結晶の場合は1.1%まで、半導体励起用の小さい結晶の場合は1.5%までの
ドープが可能です。
少ない熱レンズ効果、広い蛍光線幅、自然偏光発振といった特性により、Nd:YLFはCW、モードロック動作
の用途において優れた媒質とされています。
Y3+の線対称 | S4 |
屈折率 @633nm | n0=1.4529 ne=1.4755 |
密度、g/cm3 | 3.97 |
熱伝導、W/mK | 6 |
非線形屈折率n2(ESU)、×10-13 | 0.6 |
dn/dt@1.06μm、grad-1 | 4.3×10-6 along A |
2.0×10-6 along C | |
Nd3+分配係数 | 0.33±0.02 |
溶解状態でのNd3+濃度、at.% | 2.5-3.5 |
ロッドでのNd3+濃度、at.% | 0.8, 0.9, 1.0, 1.1, 1.5 |
Nd3+(ドープ濃度0.17at.%以上の場合)の蛍光寿命、μs | 540 |
発振波長、nm | 1047, 1053, 1313, 1324, 1327 |
標準レーザロッド仕様
両端面仕上げ、scratch/dig | 10/5 - 20/10 |
両端面平坦度 | λ/10 |
両端面形状 | Flat-Flat または Brewster |
両端面平行度、arc秒 | <20 |
両端面垂直度、arc分 | 5 |
結晶方位公差 | ±1° |
側面仕上げ | fine ground |
両端面コーティング | AR<0.2% |
ランプ励起用レーザロッドの最大サイズは、
外径 : φ5mm
長さ : 90mm
です。